積算とは、数百の工事項目を見積もること。
その難度まで考えれば、選択肢は無限に広がる。
お客様が、ある工事物件の発注先を決めるにあたって、決定的に重視するのが金額だ。それを見積もる仕事を積算と言う。たとえば、管材などの材料費や運搬費、足場を作る仮設費、重い機材を持ち上げる重機費、職人の人件費、技術料などを指し、数億円に届く工事では数百項目にも上る。しかも、高所や暗くて狭い現場での作業、あるいは極めて高い精度が求められる作業など工事内容によって難度が異なるため、『複雑度』という概念を用いながら計算していく。そして、できるだけ金額を抑えたいお客様がどこまで納得できるか、そこに向けてあらゆる工夫を施し完璧な見積りを出すという。もう、おわかりだろう。積算とは、工事のあらゆる局面を知り、もっとも合理的な手順を考え出せる者にしかできない仕事なのだ。
これは、冗談じゃない。経験がもっとも大事だから、
日本中のあらゆる工事を全部知りたいと思う。
北川はその積算のプロであり、セイワの積算部門を率いて売上を支える。彼の手法はこうだ。
「まず、頭の中に現場を描きますね。ただ、半導体工場なんかだと企業秘密ばかりなので、ギリギリの情報しかもらえない。つまり、もうイマジネーションです。広い敷地があって、設備を置いてパイプをつなげていく…。あ、ここの工事はあとからじゃ無理?この重さの機材を5階に上げるには、重機はあれだな…。回転半径がこれなら安くなるな…ってね。もう、頭の中で工事していくんです。だから、現場と経験がとても大事。でも、それじゃ足りないから人に聞くし、過去の工事データを見てあたかも経験したように自分の中に消化していくんです。これが肝。だから、私は日本中の工事を全部知りたいと思ってますよ」。
積算初体験は、頭の中の工事初体験となった。
その金額はみごと的中。ガッツポーズだ!
北川には思い出の仕事がある。それは積算の初仕事で、セイワ初の公共工事の入札だった。つまり、世の中に認められるかどうか、最初のチャンスでもあったのだ。そこで、たった300万程度の工事の見積りに、北川は1週間を費やした。その結果、実績のある競合各社を押さえてみごと受注。入札額は、先方予算の96%という高精度で決まった。
「もう、ガッツポーズでしたね。やったーって。学生の頃、わからなかった難問を解いてスカッとするあの感じかな。これでわかったんです、頭の中で工事するっていう意味がね。まぁ、今なら、2、3時間程度の仕事に1週間かかって、ほんとだったら社長に叱られるとこだったんですけど(笑)。自分の得意分野を、社長に見定めてもらえましてね。今、すごく楽しいですね」。