FRPライニング技術の習得とは、
自分独自の経験値を積み上げること。
セイワが得意とするのは、FRP(強化プラスチック)のライニングに塩ビの溶接といった特殊接合に関する技術だ。プラントの中で装置は各専業メーカーが開発・製造するので、それらをつなぐパイプライン…配管材の切断・加工・接合を自らできるというのは、プラントエンジニアにとってはベーシックな強みとなる。
とくに、これらは鉄など一般の溶接とは異なり、いまだに独自性が強くて経験値がものを言うためスペシャリストが少ない。加えて、それらを利用するプラントというのが、純水や劇薬といった扱いの難しい流体を使用する半導体や医薬品などの製造ラインのため、結果的に付加価値が高いのだ。吉武は、そのような技術者の一人だ。今では、一人のスペシャリストとして、スペシャリスト軍団を管理する立場でもある。
FRP、塩ビの接合技術は簡単ではない。
その特殊性にこそ価値がある。
吉武のスペシャリストへの道は、18歳の時に始まる。最初は図面を読み正しい寸法に切る切断、次がFRPの継ぎ手に接着剤を塗り挿入してつなぐ配管製作という基本作業。そして、目標のFRPライニング技術へと進むと、いよいよガラス繊維製の膜を接着面に押し当てて、間に入った空気を抜き精密に接合する作業だ。ところが、これが簡単ではなかった。
「何のことはない。そこで1年を越えちゃったんです。そのあと、塩ビ溶接をモノにするために練習を重ねて、結局一回りするのに3年近くかかりましたかね。でも、この技術はほんとうに深い。まだまだ知らないことがあって、未だ開発段階ですよ。一方、並行して現地調査を勉強して、初めて現場を任されてね。24、5歳で、一通りできるようになりましたね」。
まさに生き物のように変化する現場に、
自分の作品を残す。たまらなく面白い。
管理者としての吉武は、プロジェクトリーダーの下で時に1日50人をマネジメントする。同様に、協力会社と元請・お客様との情報交換は逐一行い、それこそが大事なのだという。だが、にもかかわらず、毎日いろんなことが起こっている。
「やっぱり、現場はまさに生き物ですよ。図面と違う、準備しておいた配管がハマらない。僕たちは、そうやって現場と戦っているんです。でもね、それがいいんだね。僕はこっちをやりたい。職人って面白いですよ。自分が組んだ配管がどんどんつながっていく、その形を見るのがいいねぇ。オレがやったんだって、残ってるから振り返れるし。あの東京の隅田水族館の大水槽への配管、水が入っていく様子見るとね。もう、感動でクーってきますからね」。